2002年11月 9日更新
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「ズージャでGO!」を書き終えた五反田博士にひろ子が直撃インタビュー。
ひろ子: 博士、長い間ご苦労様でした。
五反田: 本当に長かった! 1998年の夏に書き始めたから、4年越しということになる。2000年になる前には完成させようと思っていたが叶わず、ならば20世紀中にと思ったが、それも叶わず、というわけで随分と時間がかかってしまった。
ひろ子: 早速、インタビューに入りたいのですが、そもそもどうして「ズージャでGO!」を作ろうと思ったのですか?
五反田: 基本的にわしは教え魔でな。大学のジャズ研時代から後輩達に「ジャズ講座」みたいなことをやっておった。実は「ズージャでGO!」の半分くらいはそのときのテキストを元にしておる。もちろんその頃は部室に集まって、わしの書いたテキストとそこに載せた音楽をカセットで再生しながら講座をやっておったのだが...

それから随分時は過ぎて、ビートルズの「A Hard Days Night」のCD-ROMを買ったのじゃが、それを見て「あ!、これだ!」と思った。

ひろ子: Voyagerから出ていたやつですね。1993年くらいでしょうか。
五反田: Hyper Cardという「マルチメディア・ハイパーテキスト・ツール」とでもいうような、プログラム上で動くんじゃが、脚本や曲目リスト、シーン毎のインデックスなどを見ながら、アンダースコアが引いてある文字をクリックするとそのムービーが再生される、みたいな非常にインタラクティブなものじゃった。
ひろ子: それを使えば大学時代の「ジャズ講座」をパソコン上で再現できると思ったわけですね。
五反田: ところがHyper Cardというソフト、当時のMacintoshでは重くて、その後、Voyagerから「エキスパンドブック・ツールキットII」という、Hyper Cardを使わなくても同じような「マルチメディア本」を作るソフトが出て、わしも持っておるじゃが、「作ろうかな?」と思ったのじゃが、まあ、要はやる気が起きなくて作ることはなかったのじゃ。
ひろ子: そこに登場するのが「インターネット」だったんですね?
五反田: 1998年から「まつバンド」のホームページを作り始めて、その片手間に「ズージャでGO!」を作り始めたんじゃ。
ひろ子: なるほど、そうでしたか。

ところで、こういう「ひろ子」と「博士」の会話形式で作ろうと思ったのは何故なんでしょう? 理論とかを教えるんだったら、教科書のように書いていった方が都合がいいのではないでしょうか?

五反田: 確かに会話形式では語るに辛いところもあったが、読みやすく分かりやすくするにはこれがベストじゃと思ったんじゃ。

実はこのアイディアは会社で仕事の関係でたまたま見つけた、「ISO9001取得講座」みたいなページが元になっておる。イラストを交えながら会話形式で書いてあって、非常に分かりやすかった。

ひろ子: 私が博士の説明の合間に素朴な疑問をぶつけることで、読んでる人の代理になっているんですよね。

また、教科書と違って同じことを違う角度から見たり、違った説明で何回か登場するのも分かりやすかったように思います。

五反田: 例えばII-V-III-VIでエンディングを伸ばすなんかを第2部第3話第2部第5話で説明しているところじゃな。

わしが伝えたかったのは教科書のページをめくるように、「これをマスターしたら次はこれを勉強して...」なんていう考え方では物事を学べないということじゃ。何だか分からないけどとにかくやってみて、だんだんやっていくうちにいろんなことが一辺に見えてくる、と考えておる。マジメな人なんかは「これをマスターしなきゃ次に進めない」なんて考えてしまいがちじゃが、それではイカンのじゃ。

ひろ子: 最初の頃、よく言われました。「とにかく弾いてみなさい」って。その意味でもとても実践的なジャズ講座でした。
五反田: まあ、その反面、体系的ではなくなってしまったのだが、そういうのは専門書に任せることにしたわけじゃ。
ひろ子: でも、いきなり第1部第1話でコードが出てくるのは「初心者用ジャズ講座」としてはどうだったんでしょう(^_^;)
五反田: 確かに(^_^;)

まあ、そこで「エレクトーンを習っていた」というひろ子くんのエピソードが効いてて、「コードは知ってる」という前提を置いて、説明を逃げておるのじゃ。

ひろ子: あぁ、ズル〜い!
五反田: でも実際に最初から「Cmaj7はこういう音からなって、ああだこうだ」なんて説明し始めたら退屈じゃろう?
ひろ子: 最初からじゃあ、次を読む気力が萎えてしまうかも。で、慣れたところでやっと第3部で説明されるんですね。
五反田: 「避けては通れないコードやテンションの話を、それでもやはり、なるべく避けて」というのが「ズージャでGO!」のコンセプトじゃ(笑)
ひろ子: そのせいか、「ノリ」の話がとても多かったですよね。これまでジャズの理論書などでは語られることは少なかったような気がしますが。
五反田: これこそ、わしが一番言いたかったことじゃからな。また、わし自身もそれを痛感し、悩んだことがあったから、それはぜひともみんなに伝えたいと思ったんじゃ。
ひろ子: 特にシーケンサーのピアノ・ロール画面で音符の長さを見せたり、ベースの波形を見せたりと、これまで観念的に言われてたことを視覚で見せるのは面白かったです。
五反田: 何年前だったか、NHK−BSで「Sly & The Family Stone」の分析をやっていたのだが、そこで近田春男さんが「ノリについて黒人の血だとかいうヤツがいるが、今はシーケンサーやコンピュータが発達して、ノリを分析することが可能になった。そういうものを使えばノリについて見えてくると思うし、ぼくは掴みかけている」というようなことをおしゃっていた。わしと同じ考えじゃ、さすが近田春男先生!と思ったものじゃ。
ひろ子: で、やっぱり聞いておかなくてはいけないのは私、「ひろ子」は誰なのでしょうか? 実在するんでしょうか?
五反田: それはなかなか答えづらい(^_^;)。

確かに「千葉県浦安市に住むOL」はまつバンドに実在してて、この「千葉県浦安市に住む」という文言が妙に気に入って「ズージャでGO!」に使おうと思ったし、第2部の「ひろQ」での会話やエピソードはほとんど実話じゃ。まあ、でもこんなに物わかりのいいピアノは多分、実在しないと思うが....(^_^;)

ひろ子: 確かにそうですね。でも「島袋ひろ子」っていうのはちょっと....

元Speedの島袋寛子ちゃんがベースですよね? ジャズ講座とアイドルの組み合わせっていうのは、いかがなものでしょう?

Yahooのディレクトリーで登録されているのは「ひろ子のズージャでGO!」ですよね? わざわざ「ひろ子の」を付けたのはどうして?

五反田: いや〜、それは実に姑息な動機からなんじゃが...タイトルに女の子の名前が入っていればアクセスが増えるかと...いやいや、お恥ずかしい(^^ゞ

でも最近、面白いことを発見したんじゃ。BiglobeAttayoで「島袋寛子」を画像検索すると、当然、元Speedの寛子ちゃんが出てくるんじゃが、「島袋ひろ子」を画像検索するとひろ子ちゃんのイラストが出てくるぞ〜

ひろ子: わあ、本当だ! 「五反田博士」でも画像検索してみようっと。あぁ、博士が出てきた!

それにしてもこのイラスト、上手ですね。

五反田: それはまつバンドのY尾さんの作品じゃ。初めはもっと一杯イラストを描いて貰おうとしたんじゃが、なかなかそういうわけにも行かなくて。でもY尾さんはこの「ひろ子」をもとに「まつバンドメンバー募集」のポスターや「第2回なかのぶジャズ・フェスティバル」の裏ポスター、自分のバンドのポスターなど、様々なバリエーションを作っておった。
ひろ子: 「まつバンドメンバー募集」のポスターは見ました。「ジャズ・スナックまつ」に貼ってあります。
五反田: 「ひろ子」の「お姫様バージョン」も作って欲しいんじゃが...「じー、ジャズを教えなさい!」みたいな感じで。
ひろ子: ところで博士、「ズージャでGO!」って「電車でGO!」のパクリですよね? それってまずくないんですかあ?
五反田: ロゴなんかも同じデザインでね。間違いなくアウトじゃろう。でも「電車でGO!」はそのうち忘れられていって、「ズージャでGO!」は残り続けていくんじゃないだろうか。少なくとも「ズージャでGO!」はインターネット上で生き続けるし、そうすればこれからも新たな読者を獲得していってくれればと願っている。
ひろ子: もともと「ズージャでGO!」は3部形式のつもりじゃなかったそうですが...
五反田: 今の第1部を書き終えたところで、わしは完成のつもりだったんじゃが、まつバンドのS久間くんからバンドでどういう曲を演奏するか、どうやって練習するかといったことを、まあ、彼がわしと一緒にバンドをやってた時に学んだことなんかを書いて欲しいなあ、と言われたんじゃ。
ひろ子: それで第2部第3部が始まったと...

完成は時間がかかりましたが、各章の見出しというかタイトルは最初から書いてありました。あれは書く内容は決まってたと言うことですか?

五反田: さっきも言ったように大学時代に書いたテキストもあったし、まつバンドで初心者からジャズを始めた大学生とかと一緒にバンドをやって、実話の積み重ねもあったから、「大体こんな感じで話を進めて...」というのは最初からあった。
ひろ子: そんな中で、博士が苦労なさったり、悩んだことってありますか?
五反田: やっぱり一番大きな悩みは「わしなんかが音楽を教えていいんだろうか?」ということじゃった。専門的な音楽教育を受けたわけでもない人間が偉そうに語っちゃっていいのか、とこれは実は今でもそう思っている。

その意味でも少なくともウソは書かないようにしよう、知らないことを知ったフリしないようにしようと思ったんじゃ。多少、わしの趣味で強調するところや軽く扱うところはあるかもしれんがな。ただ、第2部第3部と進むにつれてどんどん厳しくなっていったのは確かじゃ。

ひろ子: 第3部第9話のStepsなんかは随分、力が入ってましたよね。
五反田: あれは本当に一緒にバンドをやってる大学生がStepsを知らなくて、フュージョン・コンプレックスというか、サンバや16ビートも演奏したことがない、というのを目にして書いたんじゃ。
ひろ子: ただ、第10話の「ジャズ・ギター」のところは言い過ぎではないかと...
五反田: こんなことろで言い訳するわけではないが、わしの最初の楽器はギターだった。いまでもギターは弾くし大好きな楽器だが、近年の特にアマチュアの「ジャズ・ギター」にはほとほと参っているんじゃ。「ロックは出来ないからジャズでもやろうか」みたいな「でも・しか」ギターがあまりに多い。日本ではギター人口が多いし、「Jazz Life」の読者でも圧倒的にギターが多いと編集者の方から聞いたことがある。それでもなお、わしはあれを言わずにはおれなかった。

あれは大学時代からのわしの持論でもあったが、確か、ジム・ホールの教則本でギタリストの方(高柳さんだったかと思うのだが、記憶は不確か)が同様のことを書いておった。

ひろ子: 技術的な面で苦労なさった点などは? 博士はコンピュータに詳しいからそんなにないかも。
五反田: いやいや、インターネットというかhtmlなどについては素人じゃったから、リファレンス片手にしこしこ作ったものじゃ。さすがにhtmlを直に書くんじゃなく、最初の頃はAdobe Page Mill、今はAdobe Go Liveで書いていたから、随分と楽ではあったが、細かなレイアウトの調整などは直接、htmlをエディットしていた。

あと、公開当時(1998年)ではインターネットも低速でな、わし自身も28Kのモデムで通信していたから、とにかく軽いページにすることを心がけた。

ひろ子: だからじっくり読むためにダウンロード形式でも公開しているんですね。あのころは1時間もインターネットにアクセスし続けるなんて、考えられませんでしたから。
五反田: 初期の頃、MIDIデータも少ないこともあって、ページに直接、MIDIデータを貼り付けていたんじゃ。しかしそうするとページを開くのに時間がかかってなあ。こりゃイカンと思い、ボタンを押すことで別ページを表示するように修正したが、当時はJavaScriptをオフにしてる人も多くて、ハイパーリンクも一緒に書くことにした。

あとはやっぱり画面サイズの問題。下にスクロールするのはやむを得ないとして、横幅が広くて右に左にスクロールしなきゃ行けないページというのは見づらいじゃろうと。だから横幅630ピクセルにはこだわった。わし自身が14インチのディスプレイを使っていた頃はよかったのじゃが、今のように1600*1200で見慣れているとついつい、ページを大きく作ってしまう。もっとも「ぽっぷす・てぃっぷす」では横幅を750にしているが...まあ、それは時代の流れだと言うことで。

ひろ子: ダウンロードして発見したんですが、第1部のファイル名が「c...」、第2部が「d...」、第3部が「e...」となっているんですね。「ド」が「c」に対応する考え方で「c」が「1」を表しているんですね。
五反田: 気づいてくれたかね。そのファイル名については3部形式にする前からそうしておったんじゃ。また、例えば第2部第3話で使う画像やMIDIデータは全て「d3xxx」というネーミングにしている。
ひろ子: 苦労した反面、嬉しかったことなどは?
五反田: それはやっぱり、「ズージャでGO!感想メール」やリンクしたいといったメールじゃろう。本当に多くの方から感想メールなどを頂いた。中には高校の音楽の先生から「音楽の授業の参考になるところが多く見つかった」などとおしゃって頂いて、こちらは恥ずかしいやら恐縮するやらで。
ひろ子: 大学のジャズ研の部室に印刷して置いてある、なんてことも聞いたことがあります。
五反田: ますます、ウソや間違ったことを書くわけにはイカンな。これからも読み返して修正すべきところは修正しようと思っている。
ひろ子: ところで第3部の第7話が完成してから、第9話が完成するまで随分と時間がかかりましたが、その理由は?
五反田: 実はわしのMAC(G4 Quick Silver 867 Mhz)のハードディスクがクラッシュしてしまい、それまで作っていたデータが消えてしまったのじゃ。公開済みのものはプロバイダのサーバにあるが、公開前のものは跡形もなくなくなってしまった。ちょうど第9話で載せる予定だったStepsのMIDIデータを作っていて、それが消えたのが痛かった。わしにしては珍しくドラムもちゃんと入れてたからね。それでちょっと意気消沈というか、更新する気力が萎えちゃったんじゃ。
ひろ子: そんなときに「ぽっぷす・てぃっぷす」なんて始めるものだから、「ズージャでGO!」の方はどうなるんだろう? 新しいページを作る前に、まず完成させて! と思いました。
五反田: まったく、おっしゃる通り。でも「ぽっぷす・てぃっぷす」を書いているうちにまたやる気が出てきて、一気に完成させたという裏事情もあるのじゃが。
ひろ子: ようやく完成した「ズージャでGO!」ですが、今後の予定は?
五反田: しばらくは「ぽっぷす・てぃっぷす」の方に注力しようと思っている。そのうち、また書きたいことが出てきたら番外編とでもして単発的にアップデートするかもしれない。
ひろ子: わたしはそれまで出番がないのか...「ぽっぷす・てぃっぷす」に飛び入りしちゃおうかなっ。

それでは、またいつかお会いする日を楽しみに!


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