1.この曲について

1959年にブロードウェイで公演されたミュージカル「Redhead」中の1曲です。「オレの女はオレに丁度いい」なんていう、今だとちょっと・・・なタイトルです。Albert Hague作曲、Dorothy Fields作詞。主役にGwen Verdon(グウェン・ヴァードン)、相手役にRichard Kiley(リチャード・カイリー)で上演されました。

オリジナル演奏はこちら。オリジナル・キャストで録音されたアルバムから、相手役のTom Baxterを演じたRichard Kiley(リチャード・カイリー)によるボーカルです。

Redhead (An Original Cast Recording) / Gwen Verdon, Richard Kiley Personal
Richard Kiley (vocal)


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February 8, 1959, in RCA Victor's Studio A, New York City.

公式な譜面もアップされていました(いいのかしら?)。

ジャズの世界でそれほど多く演奏される曲ではありませんが、Stanley Turrentine(スタンレー・タレンティン)は3度(正確には4度)録音しています。

彼のディスコ・グラフィーによると、一番古いのは1960年初め録音のこちら。

Stan "The Man" Turrentine Personal
Stanley Turrentine (tenor sax)
Sonny Clark (piano)
George Duvivier (bass)
Max Roach (drums)

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NYC, early 1960

今回は主にこのテイクをベースにしています。この前月、1960/12/18に録音されたテイクはお蔵入りして、聞くことが出来ません。

Comin' Your Way / Stanley Turrentine Personal Score
Stanley Turrentine (tenor sax)
Tommy Turrentine (trumpet)
Horace Parlan (piano)
George Tucker (bass)
Al Harewood (drums)


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Lead Sheet (C)
Lead Sheet(Bb)
Lead Sheet(Eb)
 
 
demo audio file
Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ. January 20, 1961

もう一つは1964年に録音されて長らくお蔵入りの後に1980年にリリースされたこのアルバム。

Mr. Natural / Stanley Turrentine Personal
Stanley Turrentine (tenor sax)
McCoy Tyner (piano)
Bob Cranshaw (bass)
Elvin Jones (drums)

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Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey on September 4, 1964

図らずもぼくのタレンティン好きがバレてしまいました。ちなみにTurrentineの発音は「タレンティン」なのか「タレンタイン」なのか、自信がありません。

2.曲の構成

全体的に綺麗なコード進行で、サビ(B)への短六度上(F(ヘ長調)→D♭(短ニ長調))への転調が珍しいかも。

オリジナルの録音および譜面は1コーラス歌い切りなので、これをそのまま演奏するのかという問題が生じます。Stanley Turrentineは先に挙げたテイク全てで、テーマもソロもA(16)-A'(16)-B(16)-A"(20)で演奏しています。ただ、ソロは1コーラスしか演奏していないので、複数コーラス演奏する場合にどうしたのだろうか?という疑問は残ります。

Comin' Your WayのA"テーマを譜面にするとこんな感じ。赤枠の部分がコーダ的に引き延ばされたと考えられます。

Comin' Your WayのA"テーマ

ジャム・セッションではこの余計な4小節がウザいので、カットすることを提案します。どうせ、誰も知らない曲なんだから・・・

編集したA"テーマ

この結果、A(16)-A'(16)-B(16)-A"(16)という、ごくごく普通の64小節の曲になりました。カットした4小節は、曲の最後にコーダとして演奏する譜面にしています。

曲の最後のA"テーマ

3.その他諸々Turrentineの工夫

ジャム・セッションで採用するかどうかは別にして、Turrentineがいろんな工夫をしていますので、それを紹介しておきます。

(1)イントロ

まず、Comin' Your Wayでのイントロがカッコ良かったので、譜面と音源を載せておきます。

Comin' Your Wayのイントロ

ピアノにイントロを弾いてもらうことも多いでしょうが、毎回、毎回弾かされる方は大変だろうな、と思います。時にはこうした、アンサンブルのイントロも良いかも。でも、打ち合わせが面倒か・・・

(2)A、A'、A"のターンバック

3テイクとも、A、A'、A"のターンバックに工夫が見られます。1つ目のAはこんなコード進行。

Comin' Your Wayの1つ目のA

maj7+5/AB♭maj7E♭77/Eで、+5/AB♭maj7に進行するためのコード、最後の7/Eはテーマだけでソロに入ったら省略されます。

このターンバックは3つ目のA(A")でもやっているみたい。ピックアップ・ソロのフレーズから感じられます。

Comin' Your Wayの3つ目のA(A")

2つ目のA(A')ではこんなコード進行にしていました。

Comin' Your Wayの2つ目のA(A')

ソロでも毎回、このターンバックを使っていました。

(3)Turrentineのテーマ譜

せっかくなのでTurrentineのテーマ譜も載せておきます。イントロ付きです。

Cメロ譜 12.pdf
テナー・サックス譜 13.pdf

7.いざ、セッションへ

以上を踏まえ、これをセッションで演奏してみましょう。

1コーラスが長いので、バースをどうするか悩ましいですが、A-A'の32小節を4バースやって、Bからテーマに戻るとしても良いでしょう。

それでは、良きセッション・ライフを。


Last Update 10/24/2022 22:33 inserted by FC2 system