1.この曲について

ギタリストのPat Metheny(パット・メセニー 正しくはパット・メシーニー)作曲のSong For Bilbao(ソング・フォー・ビルバオ)です。Real Bookや黒本にも載っているので、トライした方もいらっしゃるかも知れませんが、なかなかの難曲です(ちなみに、Real Book2はあっちこっちコードが間違っています)。

パットのディスコグラフィーによると、初録音は1982年のライブ演奏です。

Travels / Pat Metheny Personal
Pat Metheny (guitar)
Lyle Mays (keyboards)
Steve Rodby (bass)
Danny Gottlieb (drums)
Naná Vasconcelos (percussions)


テーマだけ
live in Dallas, TX, Philadelphia, PA, Sacramento, CA & Nacogdoches, TX, July, October & November, 1982

しかしながら、今回、参考テイクにするのはこちら。

Tales From The Hudson
/ Michael Brecker
Personal Score
Miles In Berlin
Michael Brecker (tenor sax)
Pat Metheny (synthesizer guitar)
McCoy Tyner (piano)
Dave Holland (bass)
Jack DeJohnette (drums)
Don Alias (percussion)


テーマだけ
Lead Sheet (C)
Lead Sheet(Bb)
Lead Sheet(Eb)
midi
demo audio file
The Power Station, NYC, 1996

Infinity」で共演したお返しとばかり、Michael Brecker(マイケル・ブレッカー)がMcCoy Tyner(マッコイ・タイナー)を迎えて録音したアルバムです。ちなみにマッコイは2曲だけの参加です。コ・プロデュースも兼ねたパットが、マッコイをゲストに呼ぶことを提案したらしいです。マイケル様は当初、尻込みしたらしいですが・・・

1997年の第39回グラミー賞で「Best Jazz Instrumental Album」と、これに収録されている「Cabin Fever」でMichael Brecker(マイケル・ブレッカー)が「Best Improvised Jazz Solo」を、前年に続き二冠達成しているという、名作です。

2.曲のキモその1

構成としては、A(8)-A(8)-B(4)-A(8)の28小節1コーラスです。Bが3拍子になる、という変則的な曲ですが、キモはむしろ、4拍子であるAのリズムというかノリ。黒本にはベース・ラインが書いていないので、初見の人が演奏するのは到底、不可能でしょう。ぼくの譜面には、一応、ベース・ラインの基本パターンを書いています。

ベース・ライン

Dave Hollandが弾いているラインにほぼ沿っています。もっとシンプルにするとこんな感じ。

よりシンプルなベース・ライン

と書いておいてナンなんですが、ある程度の素養が無いベーシストには譜面があっても弾けません。どこが難しいのか説明するのが難しいのですが、8拍を3+3+2に割っているようなビートなので、変拍子に聞こえるのかしら。ベーシストを見て、この曲を演奏して下さいね。

一方、ドラムスには「8ビートです」と言っておけば大ハズレしないでしょう。

3.曲のキモその2

キモの2番目は、Aのコード進行。7sus4って何よ?っていうこと。さらにそれに続くG♭maj7#11だと?

sus4(サス・フォー)は、「シャッフル」と同じように幅が広い音楽用語で、曲や使う場所によってサウンドが違ったりします。そのため、正しく伝えるために違う書き方を選択したりします。少なくともぼくはそう心がけています。例えば、有名なハンコックの「Maiden Voyage(処女航海)」の冒頭を7sus4と書くのではなく、m7/Dと書くといったようなことです。

ところが、この曲の7sus4は他に書きようがない。続くG♭maj7#11のベース音を除いたボイシングを書くと、こんな感じになるでしょう。

ボイシング

なんと、 同じ!。ファは7sus4のsus4、シ♭は7th、ドはルート。G♭maj7#11では、ファはmaj7、シ♭は3rd、ドは#11thという次第。逆に言えば、これ以外の音は邪魔かもしれない(7sus4ではソを入れても良いかもしれないが)。

ということをピアニストが理解しないと演奏は無理かも知れません。

4.曲のキモその3

キモの3番目は、一番やっかいそうで、上記二つに比べれば簡単。Bの3拍子の所。

B

1拍半の連続で、コードはトライアド(3和音)。 ベース、ピアノは1拍半で合わせるしかないと思います。 これはソロの最中も同じように演奏します。

5.参考テイクについて

基本は本家パットと似ています。イントロとして、1コーラスを丸々、リズム・セクションで演奏してからテーマに入っています。マイケル様の方は、テナーとパットのシンセ・ギター(多分、ローランドのGR300)でテーマを奏でているので、要所要所でハモっています。このテイクではベース・ソロ、4バースはありせん。テナー、ピアノ、ギターの順にソロを取って、ラスト・テーマに入っています。ライブでは、ドラムス・ソロをやっている場合もあります。その際には、Aをドラムス・ソロにして、Bではベースとピアノも入る、という形にしていました。

エンディングはストレートにA-A-Bまで普通に演奏し、最後のAの2段目を以下のように処理しています。

エンディング

①でフェルマータして、合図で②を合わせて、③でフェルマータして終了です。

6.いざ、セッションへ

以上を踏まえ、これをジャム・セッションで演奏してみましょう。前述したようにメンバーを「選ぶ」曲です。この曲を演奏したことがある人であれば別ですが、そうでなければアマチュアでは無理でしょう。プロでも多分、厳しい。前もって参考テイクの演奏を聴かせるなどしたほうがいいです。ぼくがセッションで演奏した時は、ピアノ、ベース、ドラムスの三人とも、この曲も知っているプロの方でした(楠 直孝、Gregg Lee、平山 "三平" 恵雄)。

イントロとして1コーラス演奏するのが長ければ、最初の8小節をリズム・セクションで演奏しても良いでしょう。ぼくはそうしました。2管なら、テーマを2回演奏して、2回目にハモるなどしても良いでしょう。

それでは、良きセッション・ライフを。


Last Update 01/26/2021 2:39 inserted by FC2 system