1.この曲について
John Coltrane(ジョン・コルトレーン)のバラード集「Ballads(バラード)」から、Richard Rodgers(リチャード・ロジャース)作曲の「It's Easy To Remember(イッツ・イージー・トゥー・リメンバー)」を取り上げます。
スタンダードとして知られた曲なので、多くの演奏例があり、黒本2にも掲載されています。黒本のまま演奏して問題ないと思いますが、今回は少々マニアックなアレンジを紹介します。
2.参考テイクについて
曲としてはA(8)-A(8)-B(8)-A(8)で32小節の「歌モノ」です。キーは黒本と同じくE♭(変ホ長調)。
ジョン・コルトレーン先生のディスコグラフィーによると、アルバム「Ballads(バラード)」のために都合8テイクの録音を残しています。録音日は1961年12月21日。各テイクのあらましは以下の通り。
テイク |
演奏時間 |
構成 |
備考 |
2 |
4:40 |
Theme(A-A-B-A)、p solo(A-A)、Last Theme(B-A)、Ending |
|
4 |
2:45 |
Theme(A-A-B-A)、Ending |
|
6 |
2:47 |
Theme(A-A-B-A)、Ending |
テーマのフェイクがやや多め |
7 |
2:46 |
Theme(A-A-B-A)、Ending |
A"でSwing感が強い |
9 |
3:45 |
Theme、ts solo(A-A-B-A)、p solo(A-A)、Last Theme(B-A)、Ending |
4ビート。 |
11 |
2:38 |
Theme(A-A-B-A)、Ending |
ビート感強め。3連っぽい |
13 |
2:42 |
Theme(A-A-B-A)、Ending |
マスター・テイクに近い |
? |
2:46 |
Theme(A-A-B-A)、Ending |
マスター・テイク |
テイク1、3、5,8、10,12は出だしで躓いてほんの数秒で終わっているらしい。ピアノ・ソロを含むテイク2に始まり、全編4ビートで演奏したテイク9(倍テンじゃなく譜面通りだから違う曲に聞こえちゃう)、ビートを強めにしたり、色々トライしています。アルバムに収録されているマスター・テイクのテイク番号が不明なため、録音順序は分かりませんが、マスター・テイクが一番、バラードらしく、しかもストレートにメロディーを吹いており、これに落ち着いたと言う意味で、最終テイクなんじゃないかと推測しています。上記、テイクは「デラックス・エディション」というマニアしか持っていないCDに収録されています。
イントロなしに、いきなりテーマから入ります。コルトレーンはテーマをオクターブ上で吹く傾向があります。特にバラードでは、多くのテナー奏者が低音で吹くような曲でもオクターブ上で演奏します。この曲もそれを踏襲しています。演奏する際の参考にして下さい。
キモはやはり、エンディング。
エンディング

A"最後の1小節をIII-VIに変えてフェルマータして①、Cue(キュー、合図のこと)で、もう一度A"最後4小節を1小節ずつ演奏して②、ビートに乗って4拍演奏してから③、フェルマータ7発演奏し、7発目を十分に伸ばしてフォルテッテッシモにしてから、終わる④、というエンディング。①から②に入る時に、ベースが弓を持つ時間を作って上げられると良いですね。④はテナーが指揮をして上げても良いかもしれない。
5.いざ、セッションへ
以上を踏まえ、これをジャム・セッションで演奏してみましょう。誰もが聞いたことがあるテイクだと思いますが、意外と最後、あんなに大音量になることは意識していないもの。ドラムスにはマレットを持ってもらっても良いかも知れないです。
それでは、良きセッション・ライフを。