1.この曲にまつわるショーターのプチ歴史

サックス奏者のWayne Shorter(ウェイン・ショーター)作曲のBlack Nile(ブラック・ナイル)です。Wayne Shorterのディスコグラフィーによると、録音はこのアルバムしかありません。

Night Dreamer / Wayne Shorter Personal Score
Night Dreamer
Wayne Shorter (tenor sax)
Lee Morgan (trumpet)
McCoy Tyner (piano)
Reggie Workman (bass)
Elvin Jones (drums)

YouTube
Lead Sheet (C)
Lead Sheet(Bb-trumpet)
Lead Sheet(Bb-tenor sax)
midi
demo audio file
Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, April 29, 1964

John Coltrane(ジョン・コルトレーン)カルテットのMcCoy Tyner(マッコイ・タイナー)Elvin Jones(エルヴィン・ジョーンズ)はこの前々日の4月27日に、「Crescent(クレッセント-三日月のこと)」に含まれる曲などを録音し、8ヶ月後の12月には「A Love Supreme(至上の愛)」を録音します。つまり、コルトレーン・カルテットの絶頂期にあたる時期に、そのメンバーを2人加えて録音したということが重要です。ちなみにショーターの次のアルバム「JuJu(ジュ・ジュ)」は「Night Dreamer」の4ヶ月後の8月に、Lee Morganを除いた同じメンバーと1ホーンで録音します。

JuJu / Wayne Shorter Personal
JuJu
Wayne Shorter (tenor sax)
McCoy Tyner (piano)
Reggie Workman (bass)
Elvin Jones (drums)
Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, August 3, 1964

マッコイ、エルヴィンと一緒に演奏することを想定したかのような(多分、そうだと思う)ショーターのオリジナルを快演しています。そしてその1ヶ月後、ついにマイルス・バンドに参加し、ベルリンでのライブ録音を残します。

Miles In Berlin / Miles Davis Personal
Miles In Berlin
Miles Davis (trumpet)
Wayne Shorter (tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)
"Berlin Philharmonie", Berlin, West Germany, September 25, 1964

ショーターにとっては、怒濤の1964年だったわけです。

2.この曲に関するネタ

この曲はReal Book 1、New Real Book 3、黒本などに収録されているので、お馴染みかもしれません。が、Real Book 1とNew Real Book 3を比べてみると、まず最初のコードが違う(^_^;)

Real Book 1

New Real Book 3 (pdfはこちら)
New Real Book 3

m7m7じゃ、大違い!頼みの黒本は何て書いてあるかというと、m7と書いた上に括弧付きでm7と書いてあります。どっちなんじゃい!

もう、ここまで来るとギャグです。正解はm7/F。ベースがFを弾いて、ピアノがm7を弾いています。これはよく出てくるコードで、II-Vを一つにしたような和音。広義のV7とも解釈できます。詳しい説明は大昔に書いた記憶があるのでここでは書きません。知らない人は自分で調べて下さい。

近年は訂正されたようですね。よかった、よかった。

ネットで発見

ところがもう一つギャグがあります。Bに当たるところ。

Real Book 1

New Real Book 3 (pdfはこちら)
New Real Book 3

Real Book 1の方は2拍ずつコードが変わる、ものすご〜く難しい進行になっています。

さあ、日本を代表する黒本はどうなっているでしょうか。アッチャ〜、一緒じゃん。もしかして黒本ってReal Bookのコピー?(笑うところです)

ここはNew Realにあるとおり、ただのII-Vです。メロディーとハモリがテンション・ノートなので、11thや13thといったコードになっていますが、m7-7ということですよね。

あ〜あ、こんなことが書きたいんじゃない。もっと大事なことがあるんだ! でも、「バイブル」なんて自分で言ってる本がこれじゃ、まずくね?

3.この曲の説明

曲の構成は、イントロ(8)に続き、A(8)-A(8)-B(8)-A(8)の32小節を1コーラスのテーマ、テナー・ソロ、トランペット・ソロ、ピアノ・ソロと続いて、何回聞いてもよく分からないドラムス・ソロからラスト・テーマに入り、終わりです。

セッションで、エンディングとして再びイントロを演奏する場面を見たことがありますが、そのようにやったショーターの演奏は聴いたことがありません。

イントロは冒頭からガツン!と行きたいものです。フォルテッシモないしはフォルテッテッシモで行きたいのですが、往々にしてみんな探るように入ります。6小節まで、トランペットとテナー・サックスのオクターブ・ユニゾンですが、最後2小節でハモります。但し、テナーはオクターブ上を吹きます。実音で書くとこんな感じ。

イントロ

Aは再び、ペットとテナーのユニゾンですが、オクターブ違いではありません。本当のユニゾン。テナーはオクターブ上を吹く感じ。もし、オクターブ下を吹くテナーが居たら、そいつはモグリです。

A-A'

かつて、この曲を演奏した時に、Aで2ビートにしたベーシストが居ました。あんなに元気よく始めたのに、なんで2ビートになるのか、少しは考えろよ!と思いましたが、少しも考えていないのでしょう。反射的にテーマになると2ビートを弾くベーシストは意外と多いです。

Bには譜面に書いていない(書いても良かったんだけど)簡単なキメがあります。

B

ソロには何のキメもありません。終始、スウィング(4ビート)です。

3.いざ、セッションへ

以上を踏まえ、これをジャム・セッションで演奏してみましょう。これも出来れば、ペットとテナーの2管がいいなあ。エンディングでイントロをやる輩がいると困るので、始める前にやるのかやらないのか、決めておいた方が良いでしょう。ぼくは、絶対にやらないけど。それでは、良きセッション・ライフを。


Last Update 01/10/2021 20:14 inserted by FC2 system