1.曲の説明

Joe Henderson(ジョー・ヘンダーソン)作曲のRecorda-Me(リコーダ・ミー)は、ジャム・セッションでよく演奏される曲です。初出はジョーヘン(ジョー・ヘンダーソンの日本での略称)26歳の初リーダー作。「Blue Bossa(ブルー・ボッサ)」もこのアルバムに入っています(こっちの作曲はKenny Dorham(ケニー・ドーハム))。

Page One / Joe Henderson Personal Score
Full View
Joe Henderson (tenor sax)
Kenny Dorham (trumpet)
McCoy Tyner (piano)
Butch Warren (bass)
Pete La Roca (drums)

YouTube
Lead Sheet (C)
Lead Sheet(Bb)
Lead Sheet(Eb)
 
Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, June 3, 1963

違うテイクも挙げておくと、Woody Shaw(ウディ・ショー)との2管によるライブ演奏。元々は「If You're Not Part of the Solution, You're Part of the Problem」というタイトルで、再発時に「Recorda-Me」が追加されました。レアですかねぇ・・・

At The Lighthouse / Joe Henderson Personal
At The Lighthouse
Joe Henderson (tenor sax)
Woody Shaw (trumpet)
George Cables (electric piano)
Ron McClure (bass)
Lenny White (drums)
"The Lighthouse", Hermosa Beach, CA, September 24, 25 & 26, 1970

さらに、知ってる人が少ない、3管のアルバム。ここでは「No Me Esqueca」と言うタイトルになっています。この収録の3ヶ月後、単身で日本に初来日して2枚のアルバムを残します。

In Pursuit Of Blackness / Wynton Kelly Personal
In Pursuit Of Blackness
Joe Henderson (tenor sax)
Curtis Fuller (trombone)
Pete Yellen (alto sax)
George Cables (electric piano)
Stan Clarke (bass)
Lenny White (drums)

YouTube
Decca Studios, NYC, May 12, 1971

さて、「今さらこんな有名な曲を取り上げるなんて・・・」とお思いかも知れませんが、この曲をセッションで演奏する上で、以下の問題があります。

普通のスタンダードでは関係ありませんが、ジャズ・クラシックス(ジャズマンが作曲した有名曲)の場合には、 ある程度、オリジナルのアレンジを踏襲しないとサウンドや雰囲気が出ないことがあります。この曲の場合、その「オリジナル」が確定していないことが問題となります。

曲の構成を簡単に書くと以下のようになります。

イントロ(10小節)
イントロをやるのか、1回か、2回か
 
テーマ(16小節)
通常は2回
 
ソロ(16小節)xコーラス
 
 
セカンド・リフ(16小節)
セカンド・リフをやるのか、どのようにやるのか、やるなら2回が定番
 
ラスト・テーマ(16小節)
通常は2回
 
エンディング(10小節)
エンディングをやるのか、やるなら2回かな?

これを一つずつ解き明かしていきましょう 。

2.イントロ問題

この曲では以下のイントロが有名ですよね。

「Page One」のイントロ

しかし、 「Page One」ではこの10小節のイントロを1回しかやっていません。

上述した3管のアルバムでは2回やっています。

「In Pursuit Of Blackness」のイントロ

ところが2カ所、音が違います。さあ、どうしましょう? 黒本では1番目のメロディーで、2回繰り返しと書いてあります(コードが書いていないのは不可思議)。

別にこのイントロをやらなくても良いわけです。Steps(ステップス)のライブ盤では、いきなりテーマから入っています。これは、何かスタンダードみたいな曲をやろうということになりこの曲を選んだところ、ベースのEddie Gomez(エディー・ゴメス)が「そのイントロ、弾けない」と言ったので、イントロなしになったそうです。真偽は定かではありませんが・・・

Smokin' in the Pit / Steps Personal
Smokin' in the Pit
Mike Mainieri (vibes)
Michael Brecker (tenor sax)
Don Grolnick (piano)
Eddie gomez (bass)
Steve Gadd (drums)
六本木ピット・イン 1980年12月
※1979年と書いてある場合もありますが、これはMainieriの誤記が原因。1980年(ぼくが大学2年生の冬)で間違いありません。

3.テーマのキメ問題

黒本やReal Bookでは、以下のようなキメが書いてあります。

テーマのキメ

「Page One」でこんなこと、やってましたっけ? 聞いてみましょう。

「Page One」のテーマ

ピアノが弾いているだけで、キメのような感じではやってませんよね? 「In Pursuit Of Blackness」(3管の方)を聞いてみましょう。

「In Pursuit Of Blackness」のテーマ

こっちでやってましたね。でもベースがDを弾いているので、m69というより7のようなサウンドですね。mの方は何だろう? ちょっと、不明。

さあ、これはどうしましょうか? キメはなくても良いですかねぇ。

4.セカンド・リフ問題

この曲のセカンド・リフも有名です。2コーラス演奏するのが普通だと思います。「Page One」では、マッコイのピアノ・ソロのバックで演奏されます。

「Page One」のセカンド・リフ

「In Pursuit Of Blackness」の方は完全にブレイクして、無音(微かにハイハットのような音アリ)になります。

「In Pursuit Of Blackness」のセカンド・リフ

ジャム・セッションではドラムスとのバース(交換)にすることが多いように思いますが、今回取り上げた3テイクにはそのような例はありませんでした。

5.エンディング問題

どうやって終わるか。「Page One」ではテーマを2回演奏して、終わります。黒本には「Fine(フィーネ)」とわざわざ書いてあります。

「Page One」のエンディング

「In Pursuit Of Blackness」では、テーマの後、イントロ・パターンを2回演奏して終わっています。これもアリですね。

「In Pursuit Of Blackness」のエンディング

6.いざ、セッションへ

あなたはどのように演奏したいですか。イントロとエンディングは事前に決めておいた方が良いと思います。テーマのキメをどうしてもやりたい人は、みんなに言っておくといいでしょう。セカンド・リフはその場の雰囲気で決めてもいいかもしれません。ぼくはテナーでイントロを吹くのが好きです(変態?)。


Last Update 01/03/2021 18:41 inserted by FC2 system