1.曲と参考テイクの説明

Cole Porter(コール・ポーター)作曲のI Love You(アイ・ラブ・ユー)は、Real Bookや黒本にも載っており、ジャム・セッションでよく演奏される曲です。A(8)-A(8)-B(8)-A(8)の32小節で1コーラスの、普通の「唄モノ」です。それを何故、わざわざここで取り上げるのかというと、今回参考にするのがこのテイクだからです。

Lush Life / John Coltrane Personal Score
Lush Life / John Coltrane
John Coltrane (tenor sax)
Earl May (bass)
Art Taylor (drums)

YouTube
Lead Sheet (C)
Lead Sheet(Bb)
Lead Sheet(Eb)
midi file
demo audio file
 
Van Gelder Studio, Hackensack, NJ, August 16, 1957

1957年8月16日録音のピアノレス・トリオによる演奏です。コルトレーンのディスコグラフィーによると、この年はThelonius Monk(セロニアス・モンク)との共演(Monk's Music, Thelonious Monk & John Coltrane他)、マル・ウォルドロンの「Mal 2」、ジョニー・グリフィンの「A Blowing Session」、さらには初リーダー作となる「Coltrane」のセッションを経て、これを録音しています。ちなみに、このあと、9月1日にはソニー・クラークの「Sonny's Crib」を、9月15日にはかの有名な「Blue Train」を(1日で!)録音します。

2.参考テイクのツボ

そんなコルトレーンの飛躍の年の演奏ですから、さぞかしカシムズのコード進行で演奏しているのかと思いきや、かなり普通です。変わっているのはイントロ。ドラムスのラテン・ビートとベースの2小節パターンを4小節やってから、コルトレーンが16小節吹きます。

ベースのパターン(ベースは1オクターブ高く書くのがお約束)
Bass Pattern
コルトレーンのイントロ(実音=コンサート・キーで)
Coltrane's Intro

コルトレーンの譜割りはザックリコピーなので、参考程度に。ピアノレス・トリオなので、コードはハッキリとしませんが、ベースが「C・G・Bb・A・G・D・C、G・D・D・C・G」と弾いているところから、7と考えて良さそうです。もちろん三度を弾いていないので、メジャー(長調)かマイナー(短調)か不明ですし、7sus4とするには、Fを弾いていません。敢えて言えば、m/Cという感じかしら。いずれにしてもコードは弾かない方が良いような気がします。

コルトレーンは、Cのコンディミ(Combination of Diminish)をスケール通りに上がり下がりしています。これなら真似出来そうですね。

テーマに入るとスウィング、しかも4ビートになります。スタンダードの場合、2ビートで始めることも多いですが、このテイクでは4ビートの方が良いような気がします。まあ、趣味の問題ですが。さらにコルトレーンは2回目のA(A')の5小節目からイントロと同じラテン・ビートにして、1小節ブレイクを挟んでスウィングに戻しています。ここまで同じアレンジにするかどうかはお好みで。

Theme

コルトレーンは最後の2小節でブレイクしてピックアップ・ソロを始めます。フロントの人間からすると、ピックアップの時には、しっかりとブレイクしてほしいもの。でも、しないよね〜、みんな(笑)。上手な人ほど、ちゃんとブレイクします。

ソロになったら、全部スウィング(4ビート)で良いと思います。

ラスト・テーマは最初のテーマと同じように演奏して、2小節クッてイントロのパターンでエンディングに入ります。

エンディング
Ending

最後はイントロ・パターンを何回も繰り返して(x times repeatと言います)、合図で終わっていると考えます。

3.いざ、セッションへ

以上を踏まえ、これをジャム・セッションで演奏してみましょう。大体のことはリード・シートに書いてありますが、説明なしでは演奏出来ません。ポイントは以下の通り。

これを手短に伝えてから、演奏しましょう、大変ですが。「ラテン」と言っても色々あるので、「どんなラテン?」と聞かれたら「ドンガラタッタ、トッカ・トッカ〜」見たいなラテンと答えてみましょう。多分、通じます。大変ですが。

4.蛇足ですが・・・

コルトレーンのテーマ演奏をよく聴くと、2回目のAの3小節目まで、1オクターブ上で吹いています。その次から楽器の音域の都合からか、オクターブ下げて吹きますが、3回目のAで再び、オクターブ上で吹いています。ぼくもコルトレーン派テナーの一員なので(^_^;)、そのように吹きますが、オクターブ下にすると曲の印象が変わります。こんなことも意識してみると良いと思ます。

今回の参考曲はちょっと特殊でした。代わりにこちらはどうでしょうか。

Swing, Swang, Swingin'
/ Jackie McLean
Personal
Swing, Swang, Swingin' / Jackie McLean
Jackie McLean (alto sax)
Walter Bishop Jr. (piano)
Jimmy Garrison (bass)
Art Taylor (drums)

テーマだけ
Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, October 20, 1959

こっちもラテンで始まりますが、ちょっとニュアンスは違います。ラテンのまま、A(8)-A(8)と進み、B(8)をストップ・モーションのようなキメにして、3回目のA(8)でまたラテンにしています。ソロに入ったら全部スウィングです。このアレンジも良いですね。


Last Update 01/03/2021 18:37 inserted by FC2 system