jose Feliciano Wichita Lineman score
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第9話:ホセ・フェリシアーノの「ウイチタ・ラインマン」

はじめに

正確にはグレン・キャンベルの「ウイチタ・ラインマン」なのかもしれないが、わしが最初に聞いたのがホセ・フェリシアーノの演奏であったし、後日、グレン・キャンベルの演奏も聴いたが、やはりホセの方が遙かに洗練されていたので、あえてこういうタイトルにさせてもらう。

「ウイチタ・ラインマン」はJim Webbという人の作詞作曲による、グレン・キャンベルの1968年のヒット曲。その翌年の1969年にホセ・フェリシアーノが「A Point Of View(邦題:心の叫び)」のB面に「ウイチタ・ラインマン」をインストゥルメンタルで収録。わしはそれを幼少の頃、耳にしたというわけじゃ。ジャケットはこんなやつじゃった。

そんな昔の思い出はどうでもいいので、早速始めよう。

構成

A(8)ーB(10)の18小節で1コーラス。それを3回繰り返して、最後はGmaj7-A7を繰り返して、最後はBmaj7で終わります。譜面は1コーラスを掲載、MIDIデータはフル・コーラス収録しています。

ポイントその1

Aメロのアウフタクト。第5話の「クレア」でもアウフタクトについて書いたが、アウフタクトは「如何に曲を普通に始めないか」という音楽上の命題に対するひとつの解答じゃ。普通のアウフタクトは8小節などのパートの最後の小節から「食って」始まるが、この曲ではアウフタクトがほぼ1小節ということもあり、最後の小節を食う感じとは異なっている。Bへと入るところもほぼ1小節、アウフタクトして入っている。

ポイントその2

ポイントというか、この曲の魅力を形作っている、頻繁な転調。キーの流れを譜面に追記するとこんな感じ。

まず、冒頭のGmaj7はキー=D(ニ長調)のサブドミナント。ここからしばらくニ長調が続くが、6小節めのE7からキーが全音上のE(ホ長調)に変わり、Bの最初はサブドミナントのAmaj7Emaj7と続く。で、問題は次のGmaj7Emaj7の短三度上じゃが、何なんだろう。次のBmaj7はキー=ロ長調のトニック。ドミナントのF#7を経由して、再びGmaj7が登場。こちらはキー=D(ニ長調)のサブドミナントじゃが、Gmaj7を介して転調をスムーズにしているような感じじゃな。

まあ、理屈をこねればキー=B(ロ長調)は最初のキー=D(ニ長調)の関係調(シャープ、フラットが変わらず、長調ー短調の関係)であるBm(ロ短調)の同名調(ルートが同じで長調・短調の関係)である、とかなんとか、言えるじゃろうが、だからどうしたとも言える。確かに曲の最後がBmaj7で、これは「Gmaj7A7Bm7」というダイアトニックな進行を裏切って、Bmaj7で終わるところは、これで説明できるじゃろうが、Emaj7からGmaj7を介してBmaj7に行く、なんぞ、到底、説明しきれるものではない。

最後に

言うまでもないが、MIDIの演奏はわしがキーボードでギターの真似して弾いたものなので、ホセ・フェリシアーノのギターは遙かに素晴らしい。3コーラスを弾いているが、1,2コーラスはテーマをフェイクしながら、3コーラス目のAではギターの特性を生かした、短いながらも素晴らしいソロを弾いている。約30年ぶりくらいに聞き返したが、今もって鑑賞にそして研究に値する演奏じゃ。

みなさんもホセ・フェリシアーノを聞いてみましょう。

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