Djavan Flor De Lis score
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第4話:Djavanの「Flor De Lis」

はじめに

第3話まで書いてきて、ちょっと内容を詰め込みすぎているなあと反省。そもそも「ぽっぷす・てぃっぷす」を書き始めた時は、わしがピアノを弾きながらバンド・メンバーに「ここのサウンド、面白いじゃろう?」なんて感じで、気軽にポイントを教えるページにしようと思っておった。でも書き始めるとついつい、口うるさくなってしまう。そんなわけでこれからはもう少し軽めの内容でいこうと思うんじゃ。

いやいや、決して手を抜こうというんじゃなくってね(^_^;)。

で、今回取り上げるのはジャバンの「Flor De Lis」。ジャヴァンといえばルックスが若々しいだけに年齢不詳のところもあるが、1947年生まれだから結構、いいお年じゃ。そんなジャヴァン(どんなだ!)の29歳の時に制作したファースト・アルバム「A Voz,o Violao,a Musica de Djavan」(1976年)の1曲目が、今回取り上げた「Flor De Lis(百合の花)」じゃ。

彼の数ある楽曲の中でも代表作の一つ言われている。それでは早速、始めよう。

構成

8小節のイントロに続き、A−A’−Bで1コーラス。4小節のイントロ・パターンに続き、再びA−A’−Bのあと、Bを2回続けて、最後はイントロ・パターンを繰り返して、フェードアウト、という構成じゃ。

譜面にはA−A’−Bのメロディを、MIDIの方はイントロも含めた、フル・コーラスを収録してある。

ポイントその1

メロディ・ラインのノリというか、譜割りと言ったらいいのか、とにかくリズムが微妙だ。楽譜が全てだなんて到底思わないし、楽譜で表せないものなんてない、などとハナから考えてもいないが、それでも意志疎通の道具として楽譜は結構、便利だと思っていた。

でもこの曲を譜面にしてみて、あまりの楽譜の無力さに唖然とした。このメロディ・ラインのニュアンスはおそらく、譜面じゃ全く伝わらないだろうから、ぜひ、MIDIを聞いてみて欲しい。もちろん、MIDIの方も完全ではないが、少しは伝わるじゃろう。

なんと表現したらいいのじゃろう、この漂うような不思議なノリは。ドラムやパーカッションなどは16分音符で刻んでおり、ピアノなども普通じゃ。ベースはむしろ4分音符主体の大きなノリを提示している。


その上でジャヴァンの小節線を無視するが如きのフローティングな感じ。記譜上やむなく16分音符で書いているが、ニュアンスとしては3連譜、4連譜、5連譜といった、連譜の感じじゃろうか。

これはボサノヴァなどでも一緒で、そもそもボサノヴァは「アメリカ人にはサンバじゃ、難しいだろうから分かりやすいリズムでやってあげよう」として考え出されたリズムじゃが(笑)、その「簡単な」ボサノヴァでもメロディ・ラインはこの曲のように連譜の感じで奏でるのがツボじゃ。よく、勘違いおネエちゃんボーカルがボサノヴァをカチカチっと譜面どうりに唄ってたりするじゃろう。ああいうのはイタイ、イタイ。

ポイントその2

もはやいうまでもないかな? 「魅惑のハーフ・ディミニッシュ」の使い方じゃ。キーがだからこの曲ではF#m7-5のこと。

Aメロでも5〜7小節目にF#m7-5が登場するが、ここはB7II-Vになっているから、ちょっと違うかな。でもいい味は出している。

やはり素晴らしいのはBメロの最初。直前のGm7C7で次にFmaj7に行くと見せかけて、F#m7-5に行くのが気持ちいい。なぜなら、ここは普通にFmaj7でも何ら違和感がないばかりか、むしろそっちの方が正統的なわけだから。

「普通はこうするし、これでもイケルよね。でもこっちの方がさらにカッコイイ!」というのがいいんじゃ。この感性、わかるかのう?

その他

Bメロの後半はコーラスというのか、何人かでメロディをユニゾンで唄っている。決してハーモニーにしてる訳じゃなく、リズムなどもそんなに合ってるでもない。でも、そのバラバラな感じがとてもホッとさせる効果を持ってるように思うんじゃが、いかがだろう?

MIDIではユニゾンではサウンドしないので、やむなく2声のハーモニーにしてある。ただ、タイミングは適度にバラけるように、パート毎に手弾きし、クオンタイズもしていない。少しはニュアンスが伝わったかな?

最後に

ジャヴァンの新しいアルバムは普通にCDで入手できるだろうが、この曲についてはどうだろう。ベスト盤などの方が入手しやすいかもしれない。また、同じアルバムでもいろんなタイトルやジャケットで発売されてたりするので、探すのは大変かも。

オリジナルの「A Voz,o Violao,a Musica de Djavan」はこんなジャケットみたい。

でもAll Musicで調べたら同じアルバム名でこんなジャケットで載っていた。

また、アルバム・タイトルが「Flor De Lis」というアルバムで、収録曲も同じのもあった。

ただ、All Musicでは同じジャケットで、同じ収録曲で、ミュージシャンがホルヘ・ダルトなどのアメリカ人になっているアルバムもあった。これはちょっと信じがたい。

わしが持っているのはSound Wave Recordsから1990年にリリースされた「Flor De Lis」というタイトル。ジャケットは上のどれとも違うが、「Recorded at Brazil 1976」とあるから、中身は「A Voz,o Violao,a Musica de Djavan」あんじゃろう、多分。

みなさんも探して、ジャヴァンを聞いてくださいね。あ!、ジャヴァンだからって「J」のコーナーを探してもだめよ〜。「D」だからね。

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