実録!ズージャでGO! 1月 その3

テーマ コピーの効用、ソロの分析
Candy

1.コピーの効用

ジャズに限らず、「コピー」は上達に欠かせません。コピーするとどんないいことがあるでしょうか。

  • フレーズのストックを増やす
  • カッコイイと思うフレーズがどんな音・リズムで成り立っているかを学ぶ
  • 耳を鍛える

などなど。

2.完コピの必要性

ソロなどを一曲まるごとコピーすることを「完コピ」なんて言いますが、気に入ったフレーズだけをかいつまんでコピーするのに比べて、面倒くさいし、時間はかかるしと敷居が高いですよね。

それでも完コピする必要性の一つは「ソロ全体の流れをつかむため」です。アドリブは言葉を話すことにも喩えられますが、気に入ったフレーズをコピーするのを単語を覚えることだとすると、完コピは文章、ないしは文脈を学ぶことだと言えるでしょう。

また、完コピすると、気に入ったフレーズ以外の何気なく聞き流してしまう部分でも新たな発見があったりします。これも中々面白い。

完コピしたときは必ず譜面を書くようにしましょう。それも4小節を一段にして書くことが重要です。その理由はあとで。

3.ソロの分析

実際にリー・モーガンのソロを例にいくつか分析してみましょう。

1) 印象的なというか、ややトリッキーなフレーズからソロが始まります。

これだけだと単におちゃらけただけなんて思われるでしょうが、類似のフレーズを3コーラス目のA−A’あたりで演奏することで、ソロのまとまり、ストーリーを感じさせます。

2) ワン・フレーズの息の長さにも注目です。冒頭のフレーズに続くフレーズはAの最後の1小節目から始まり、A’の5小節目までの長さです。

ブチブチ切れ切れのフレーズは頂けませんが、長ければいいというものでもありません。人が息継ぎをするまでを長さの目安にするといいと言われています。これは何も管楽器に限らず、ピアノでもギターでも同じです。

真剣に聞いている人はフレーズに合わせて呼吸するものです。それを逆手にとって普通の息継ぎよりちょっと長めにフレーズを演奏すると緊張感が出るものです。

3) 音楽はだいたい4小節単位で出来ています。だからどうしてもフレーズも4小節単位になりがちですが、それでは面白味がありません。4小節という音楽の基本的な流れとは別な流れをソロで作り出すことによって、音楽が多層的になります。これが非常に重要。

2コーラス目のAからA’にかけてのフレーズはそれを裏切ったフレーズと言えるでしょう。

4小節単位で見ると2小節目からフレーズを始めて、1段超えて1小節目で終えています。初心者はいつも同じところでフレーズを始めて、同じところでフレーズを終えがちです。コピーした譜面を遠目で見てみましょう。フレーズがいろんなところから始まっていろんなところで終わってるのがわかるはずです。

ピアノに完コピを要求したので、そのお返しとして、Lee Morganのソロを完コピしましたので、載せておきます。

ソロ譜 Candy_LeeMorgan.pdf

4.曲について

原曲は1944年作の「Candy,I call my sugar Candy〜」で始まる歌詞の唄モノで、おそらくバラード調の曲です。Lee Morganは1958年録音のアルバム「Candy」で、テーマをアンサンブルとドラムス・ソロ(?)が交互に出てくる巧みなアレンジで演奏しています。ピアノはソニー・クラーク。歴史に名を残すような偉人ではありませんが、スウィングを勉強するには適していると思います。

Lee Morganの演奏をそっくりなぞって演奏しましょう。テーマにはドラムス・ソロ(?)が挿入されている関係上、Aが2小節長いですが、ソロでの進行は普通のA(8)−A(8)−B(8)−A(8)で、ピアノ、テナー、ベースの順。ピアノ・ソロはソニー・クラークのソロを完コピで弾いてもらいます。Lee Morganはベース・ソロの後、ドラムから4バースが始まって、最後に4小節余分なドラムを経て後テーマに入っていますが、ぼくらは普通にピアノ、ドラムス、テナー、ドラムス・・で4バースをやって、後テーマに戻りましょう。

Lee Morganはテンポはくらいという、結構速めで演奏していますが、ここではピアノが弾ける程度のテンポでいきましょう。

5.参考演奏

リー・モーガン唯一のワン・ホーン・アルバム。ベースだけがややイモか。

Candy / Lee Morgan Blue Note 1590
Lee Morgan trumpet
Sonny Clark piano
Doug Watkins bass
Art Taylor drums
1958年2月2日録音  

6.データ

この回で紹介したデータをまとめておきましょう。

 
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