実録!ズージャでGO! 1月 その2

テーマ ノリの極意
Blue Monk

1.ノリの極意

どんな音楽でもノリは大事です。ジャズでは「スウィングしてる」なんて言いますが、スウィングしていればテーマを演奏しただけでも聞く人をグッと惹きつけることが出来ます。

ほとんどの場面で通用する、ノリよく演奏する極意は

音符を長く弾く

です。4分音符や8分音符の90%くらいまで音を伸ばして弾くということです。4分音符でベースラインを弾いたところをシーケンサーの画面で見るとよく分かるでしょう。

「音符が短い」状態というのは以下のようになります。

楽譜で書くとどちらも

と書けるでしょうが、音符が短い方を厳密に音符にすれば

となるかもしれません。(ズージャでGO! 第1部第5話第2部第3話参照)

音符を長く弾くなんて簡単なことに思うかもしれませんが、実はかなり大変です。音符が短いと次の音に移動するまでの時間稼ぎが出来るので、速いテンポでも比較的簡単に演奏できてしまいます。一方、音符を長く演奏しようとすると、次の音に移動する寸前まで前の音を弾いていなければならず、次の音に素早く移動しなければなりません。

ベースを例にすればわかりやすいでしょう。第4弦でソからファへ移動するとき、音符を長く弾くにはギリギリまでソを左手で押さえておいて、素早くファに移動する必要があるわけです。

ピアノでも同じです。ピアノは弦をハンマーで叩くという打楽器ですが、鍵盤を押している間はダンパー(消音器)が外れて音が伸び、鍵盤を放すとダンパーが効いて音が止まるという、持続音系の特性も持っています。つまり、ピアノであってもオルガンと同じということです。

さて、問題はドラムス。叩いた後は、音を止めることは可能でも、音を伸ばしようがありません。どう説明したものか(^_^;)。まあ、いずれにしても

音(ビート)は点じゃなく長さを持った線である

ということが重要です。

ビートを点だと思うと、ジャストの位置に弾くのは勘の世界というか神業になってしまいます。長さを意識して弾くとテンポをキープするのもより簡単になると思います。

2.ウッドベースの特性

ジャズ、特に4ビートにおいてウッドベースは欠かせない楽器です。エレベではダメなんでしょうか? ダメではないですが、上手く弾くのは難しいと思います。

ウッドベースは弾いてから音量がピークに至るまでが長い、音の立ち上がりが遅いと言われています。つまり、弾いてから若干遅れて音のピークが来るわけです。そのためベーシストは若干早めに弾いて、音のピークがジャストのタイミングに入るようにして弾きます。下のグラフは皆さんの先輩が実際に弾いたものです。ジャストの若干前から音が鳴り始めて、音のピークがジャストになるように弾いているのが分かるでしょう。

ベースを聞くと「ウォーン、ウォーン、ウォーン、ウォーン」と聞こえるのはこのせいなのです。エレベはウッドベースに比較して音の立ち上がりが早いため、4ビート独特のスウィング感を出すのが難しいと言えるでしょう。

昔々(笑)、ジャコ・パストリアスが登場したときに、「エレベで4ビートは弾けるか?」みたいな論争があり、結論としては「ジャコだったら弾ける」みたいなおバカなものでしたが、この原理で説明できるだろうと思います。

そう考えるとベースって大変ですね。ジャストより早めに弾いて、音をギリギリまで伸ばして、次の音はまた早めに弾いて・・・、と精密機械なみです。(ズージャでGO! 第2部第7話参照)

そんなベーシストに格好の練習素材を見つけました。セロニアス・モンクの「ミステリオーソ」というB♭のブルースですが、6度インターバルで上がったり下がったりという、スケール練習のような曲です。これをアルコ(弓)で弾くといい練習になると思います。アルコで弾くとピチカートで弾く時以上に音を伸ばすのがしんどいです。ミステリオーソのベース譜

3.4ビートにおける8分音符

4ビートで8分音符を弾くと、オモテの8分音符がウラの8分音符より若干長くなります。ウラの8分音符が若干モタる、とも言えます。これを表すのに、教則本では「4ビートの8分音符は三連符の前二つと後ろ一つ」みたいに説明していることがありますが、これは大ウソです。三連の二つと一つということは、長さの比は「2:1」ですよね。そんな音楽はありません。

シーケンサーで気持ちいい8分音符の比を調べてみたところ、「13:11」ないしは「14:10」くらいです。「15:9」つまり「5:3」になってしまうと古くさいジャズの香りがしてきます。基本的には時代が進むにつれ、より均等な8分音符になってきた、と言えます。

でもそんな微妙なタイミングを意識して弾くのはかなり難しいです。そこで、ぼくがおすすめする方法は、「均等な長さのつもりで弾くんだけど、回りに引きずられてついついオモテが長くなってしまった」くらいの気持ちで弾くことです。

4.曲について

セロニアス・モンクのBbブルースです。トリッキーなメロディが多いモンクにしては割と普通のメロディです。テーマはシンプルな3コードのブルースですが、アドリブではII-Vありの普通の進行で演奏しましょう。

これがジョン・コルトレーン先生になると、アドリブもあえて3コードで演奏します。そういうパターンもいずれは挑戦してみましょう。

テンポはという、かなりゆっくりめで、最初から4ビートで。テンポが遅いとついつい「三連ビート」になりがちですが、そこはグッと我慢して4ビートを堅持してください。「三連ビート」はいずれ取り上げましょう。

テーマはピアノとテナーで、テナー、ピアノ、ベースとソロを回して、後テーマに行きます。イントロはなしで、エンディングも特になしで、そのまま終わりましょう。

5.参考楽曲

作曲者のセロニアス・モンクがジョニー・グリフィンを擁して「ファイブ・スポット」で演奏したアルバムを紹介します。この曲もそうなんですが、モンクの曲は演奏時期によって微妙にメロディが違っていたりしますが、今回のメロディはこの演奏をベースにしています。

In Action / Thelonious Monk Riverside 12-262
Thelonius Monk piano
Johnny Griffin tenor sax
Ahmed Abdul Malik bass
Roy Haynes drums
1958年8月録音  

ついでにベースの練習として挙げた「ミステリオーソ」のアルバムも紹介しておきます。上のアルバムと同じライブの演奏です。

Misterioso / Thelonious Monk Riverside 12-279
Thelonius Monk piano
Johnny Griffin tenor sax
Ahmed Abdul Malik bass
Roy Haynes drums
1958年8月録音  

6.データ

この回で紹介したデータをまとめておきましょう。

 
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