毎月第3土曜日の「まつバンド」のジャム・セッションの日。ひろ子は見学に来たが、聴いていてもみんなが何をやってるのか、ちんぷんかんぷん。 |
ひろ子: |
みなさんが見てた譜面って、A4の紙1枚の短いやつですよね?
あれでどうやってあんなに長く演奏できるんですか? |
五反田: |
それはね、ジャズを演奏する基本的な約束があるのじゃよ。
じゃあ、さっきも演奏した「森田ーっ!、と」を例にとって説明しようかのう。この曲は知ってるじゃろう、先日亡くなったフランク・シナトラも唄っておったから。曲名は「Macじゃないと」に変えてたっけな。
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ひろ子: |
わたしはWindowsですけど、その曲なら知ってます。
さっきも最初は知ってるメロディーが出てきて、「これなら知ってる、知ってる」と喜んだんですけど、そのうち何やってるかわからなくなって、最後にまた初めの知ってるメロディーが出てきたんです。
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五反田: |
ひろ子ちゃんが知ってるのはこのメロディーじゃろう。

これはこの「森田ーっ!、と」を作曲した「来戸 賄賂」が作ったメロディーなのじゃよ。これをジャズでは「テーマ」というのじゃ。
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ひろ子: |
みなさんが見てた譜面もこれでしたね。博士、このC、Dm7というのはコードですよね? |
五反田: |
おう、ひろ子ちゃんはエレクトーンを習っていたんじゃな。それならコードは知ってるだろうから、話が早いな。この「テーマ」のコード進行に沿ってアドリブをするのがジャズの基本なのじゃ。 |
ひろ子: |
(?????) |
五反田: |
すまん、すまん。ちょっと話をはしょり過ぎたな。
この「テーマ」、「森田ーっ、と」なら16小節を1コーラスというのじゃ。
これを最初に1回みんなで演奏したあと、次はそのコード進行だけを拝借して、違うメロディーを1コーラス単位に弾くのじゃ。それを何回も(何コーラスも)繰り返す。これをアドリブとかソロとか言っている。
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ひろ子: |
じゃあ、わたしが聴いていて分からなくなったのも「テーマ」が終わってソロになったからかなあ。ソロの間もメロディーは違っても、曲は進行していたんですね。 |
五反田: |
その通り。もう1回、短めに演奏してみるから、ソロに入ってもどこを演奏してるかをちゃんと譜面で追いかけてみなさい。
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ひろ子: |
何となく、わかりました。だけど途中、ドラムだけになったところで分からなくなってしまいました。 |
五反田: |
あそこは4バースといって、ドラムとそれ以外の人で4小節ずつ交互に演奏しているのじゃよ。ドラムだけになったところも曲は進行しているから、わからなくなったのじゃな。これを見るとわかるかな。
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ひろ子: |
あ、そうか! あくまで「1コーラス」を繰り返すんですね。一瞬、ドラムだけになったからパニックになってしまって... |
五反田: |
4バースのあとに、もう1回、最初と同じテーマをみんなで演奏して終わりじゃ。今の演奏の構成を図にするとこんな感じになる。
どうじゃ、ジャズって簡単じゃろう!
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ひろ子は「簡単だ」とはとても思えなかったが、少しはわかったような気がした。でも、どうしたらみんなのように演奏できるのか、全然わからなかった。 |
つづく |