1.ボサノバの起源ジャズにおいて4ビートに次いで演奏されることが多いリズムと言えばボサノバでしょう。ボサノバの起源については諸説ありますが、ジョアン・ジルベルトやアントニオ・カルロス・ジョビンらが「アメリカ人にはサンバは難しいから、単純なリズムにしよう」と作り出した、なんて話がまことしやかに伝わっています(多分、ウソ)。 いずれにしても1950年代半ばに作り出された、比較的新しめのリズムですが、1960年頃からアメリカを中心に大ヒットしたそうです。通常、サンバはイン・ツー、つまり2分の2拍子で書かれますが、ボサノバは4分の4拍子で表されます。 「サンバが難しくて、ボサノバが簡単」と信じられる理由として、ボサノバは基本的には8ビートである、というのが挙げられます。割り切れるカチッとしたパターンを繰り返す演奏法が「簡単」といわれるゆえんでしょうか。ただ、そのビートに乗っかるメロディは連符風というか、フワフワしてるというか、漂うニュアンスで演奏することが多いです。 2.ボサノバ・パターンボサノバ・ドラムの基本パターンはこんな感じ。 ベースの基本は以下の通り。でも8分音符を正確に弾かないとリズムを止めてしまうことになるので要注意。 ガットギターはこんな感じでリズムを刻みます。 ギターがリズムを刻んでるという前提でのピアノはシングル・トーンをポロポロと弾くのが定番。ギターが居ない場合は白玉系の音符を中心に、ポイントポイントでリズムを刻むのがいいかも。あんまりガチャガチャ弾かない方がいい。 3.ボサノバ風?おそらくこのバンドで純粋なボサノバをやることは二度とないでしょうが、「ボサノバ風」のビートはしょっちゅう登場するでしょう。日本のミュージシャン達が、「リズムはボサノバ風に」とかボサノバチックに、あるいは単にボサノバで、といいながら、とてもボサノバには聞こえないビートで演奏することがあります。8ビートで、というと若干、ニュアンスが違うからでしょうか。正確に言うとウェザー・リポートのバードランドのビートで、というのがいいかもしれない。ぼくはサウンドから「チェキ・チェキ・ビート」なんて言っています。 4.曲についてアントニオの唄(Antonio's Song)は1970年代に一世を風靡したマイケル・フランクスの曲で、インストで演奏されることはあまりないですが、敢えて取り上げてみました。A(8)−A(8)−B(8)−B(8)で、B前に簡単なリズムのキメがあります。ソロも基本的には同じコード進行ですが、アドリブを取りやすいように一部をII-V-I-IVに変えています。 ソロ・オーダーはテナー、ピアノの順。ベース・ソロや4バースはなし。8小節のイントロ付きで、エンディングにイントロのパターンを8小節やって終わりましょう。この曲のようにイントロがある場合は、それをそのままエンディングで演奏することが多いです。演奏上の常識として覚えておいてください。 ちなみに「アントニオの唄」のアントニオとはアントニオ・カルロス・ジョビンのことです。 5.参考演奏マイケル・フランクスの代表作。Crusadersのメンバーを中心にMichael Brecker、Davis Sanbornといったメンバーがソロイストとして起用されたアルバム。「アントニオの唄」ではサンボーンがソロを吹いています。
「チェキ・チェキ・ビート」の代表としては「Birdland」でしょう。本家ウェザー・リポートはご存じでしょうから、ここではそれをボーカルでカバーしてしまったという、マンハッタン・トランスファーの演奏を紹介しましょう。このアルバム以前から「Four Brothers」の4テナーを4人で歌ったりという超絶技巧な人達でしたが、このアルバム、いやこの一曲で一気に垢抜けて世界的なスターになりました。これは名盤です。
6.データこの回で紹介したデータをまとめておきましょう。
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