シーケンサーを使って練習する方法を教わったひろ子はブルース以外の曲にも挑戦したくなりました。 |
ひろ子: |
博士! ブルース以外の曲も弾いてみたいんですけど。 |
五反田: |
おう、そうじゃな。何もストイックにブルースばかり弾いていてもつまらんしな。
簡単なスタンダードでもやってみようか?
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ひろ子: |
ブルースとスタンダードでは演奏方法は違うんですか? |
五反田: |
演奏方法や考え方は全く変わらない。ただ、ブルースはそのサウンドやコード進行を誰でも知っているので、それをバックグラウンドとして演奏する事が出来るのじゃ。
もっと、分かり易く言うと、ブルースでは「次はこうだな、こう演奏するんだろうな」という前提で聴く人も一緒に演奏してる仲間も思っている。そんな中では多少、変わったフレーズや違うサウンドを弾いてもみんなが付いて来てくれる。その分、いろいろと冒険が出来る訳じゃ。
むしろ、ブルースの場合は「どんな風にみんなの期待を裏切ってくれるんだろう」というのがポイントかもしれん。「ブルースはジャズマンの履歴書」みたいなもんでな。その人がどういう演奏をするのかはブルースを演奏させてみればわかったりするもんじゃ。
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ひろ子: |
その点、スタンダードではそんなに冒険は出来ないということですね。 |
五反田: |
スタンダードではブルースと違い、どうしても曲のイメージやコード進行にある程度は忠実に演奏せざるを得ないんじゃ。かといって、ブルースとそれ以外の曲とに変な敷居を作るのはよくないぞ。
むしろ、ブルースで学んだ「細かいコード進行にとらわれない大きな流れのフレーズ」をスタンダードで試してみたり、スタンダードのコード進行に忠実な演奏をブルースの中で応用してみたり、そういう自由な発想がジャズでは一番大切なんじゃ。
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ひろ子: |
学んだことをフィードバックするんですね。 |
五反田: |
いいことを言うね。フィードバックといってもジミヘンのことじゃないぞ。 |
ひろ子: |
でも、そうするとやっぱりコードのこととかを勉強しないと駄目なんですね。 |
五反田: |
残念ながら、そうなんじゃ。でも、基本はブルースと同じだぞ。曲の流れを掴むためにベース・ラインを自分の楽器で何回も弾いてみて、そうする中で湧いてきたメロディーを弾くんじゃ。
「I'll Open Your Eyes(?!)」という曲がある。ちょっと佐久間くん、ベース・ラインを演奏してみてくれ。
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ひろ子: |
あ〜あっ!、キーがFで、D7のコードがありますね。ブルースのときに教わったコードですよね。 |
五反田: |
ブルースの時はD7がキモって言ったんだっけな。この曲ではもちろん、D7もポイントだが、それ以外にもいっぱいポイントはある。Em7−5、A7、Dm7のところやCm7、F7、Bbmaj7のところや、さらにはBm7-5,E7のところなど...
まあ、いつかはその辺のところも説明しなきゃいかんな。
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ひろ子: |
それにしても、今度のベースラインはなんだか、とっても難しそう! |
五反田: |
ん〜ん、そうだな。佐久間くん、もうちょっと基本的なラインでやってみてくれんかね。
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ひろ子: |
これなら何とかなりそうです。それにしてもいろんなベース・ラインが出来るんですね。 |
五反田: |
ベーシストはベース・ラインで毎コーラス、アドリブしてるようなもんじゃからな。ソロの盛り上がり具合や曲全体の構成を考えて臨機応変にラインを組み立てていかなきゃならんのじゃ。 |
ひろ子: |
ブルースの時と比べていっぱい、コードが出てきますよね? こういうコードをマスターするにはどうしたらいいんでしょう? |
五反田: |
地道に練習するしかないんじゃが、ただ黙々と練習してばかりでもつまらんから、こんな風に曲のコード進行に沿って、カラオケに合わせてアルペジオ(分散和音)の練習もするといい。
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ひろ子: |
アルペジオって、コード(和音)の音をひとつづつ弾くことですよね。音符の下の数字は何の意味ですか? |
五反田: |
コードの構成音を数字で表しておるんじゃ。ピンと来なければ今のところは無視してもいいぞ。これはコードのルートの音から上っていくアルペジオだったが、逆に高いほうから下ってくるアルペジオ練習も必要じゃ。
これらを組み合わせて上ったり下ったりしてみると、ちょっとは音楽らしくなる。
おんなじ要領でスケール練習も出来るんじゃ。
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ひろ子: |
スケールって、音階のことですね。ジャズのスケールって難しいと聞いたんですが... |
五反田: |
確かにやさしくはないが、「スケールを覚える」みたいな感覚じゃなく、全体のサウンドの流れで自然な音を繋げていくとスケールになるという感じで練習するといい。スケールといったって、そんなに特殊な音使いをするわけではないからな。こんな感じじゃ。
まあ、スケールといってもいろいろあって、ここにあげたのが唯一というわけではない。ここでは6小節目のG7は無視してDm7のスケールを続けているし、8小節目のF7や何回か出てくるC7ではこんなスケールも当てはまる。
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ひろ子: |
それぞれのスケールに名前があるんですよね? 全部おぼえるのは大変だなあ... |
五反田: |
だから、ひろ子ちゃん! スケールを覚えようなんて思わずに全体の流れに乗って自然に音をつなげていくんじゃよ! スケールの名前なんてどうでもいい!
とにかく、「はじめにスケールありき」なんて発想は持たないこと。スケールの音を拾ってフレーズを作ろうなんていう考えは間違いじゃ。あくまでフレーズというか「唄」があって、それがたまたまあるスケールの音だったということ。それを決してはき違えないようにしなさい。
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ひろ子: |
わかりました。でも、こういう練習をするときには前回に教えてもらった「シーケンサー」があると、伴奏してもらいながら練習が出来て便利ですね。 |
五反田: |
そうじゃ、こんな練習にバンドのメンバーを使うわけにもいかんしな。伴奏なしだと練習もつまらんし。
でも、このアルペジオやスケールの練習は楽器を弾く人間は一生、やり続けなければいけないものなんじゃ。一度やったからそれでおしまい、というようなものではない。
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ひろ子: |
やっぱり基礎は大事なんですね。わたしも練習しなくっちゃ。 |
五反田: |
これでひろ子ちゃんもひと通り、ジャズのことは学んだじゃろう。
音楽は頭でっかちにならずに、とにかく演奏してみることじゃ、それも仲間と一緒に。へただから弾けないとか、もっと練習してから演奏するとか、ごちゃごちゃ言っとらんでどんどん積極的にセッションするべきじゃ。
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ひろ子: |
わ、わかりました! じゃあ、「I'll Close My Eyes」を一緒にセッションしてください。 |
五反田: |
よおし! それじゃあ、やってみよう!
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みなさんもどんどん演奏しましょう! では、また。 |
おわり |